職業はウーパールーパーアーティスト

「ウーパールーパーアーティストのユキンタです。」
ビジネスの場には不似合いのポップな名刺を差し出した。

先日、とある企業の展示会に行ってきた。私の名刺はビジネスの場から遠い感じのポップなデザイン。しかも肩書はウーパールーパーアーティスト クリエイターの「ユキンタ」の名刺。

受け取った方は一瞬時が止まる。

そんな職業あるの?と言われることもある。 


私は就職をきっかけに大学時代を過ごした京都から東京へ出てきて、2011年より作家活動をスタートさせた。「作家」なんて言うと大それたものだが、会社員の傍ら趣味で描く程度だった。

当時はmixiが流行っていて、mixiを通じてグループ展とやらのお誘いを受けたのがきっかけで人前に作品を出すようになった。
初出展は下北沢の隠れ家的なバーだった。

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美術学校出身ではない私にとって、展示自体がどのようなものかよく分からなかった。

初めて自分の作品がお店に飾られるというだけで何だか嬉しく浮かれていた。憧れのシモキタ。

会社から帰宅後夜更かしして描いた。休日は一晩中没頭して気づけば外が明るい。寝不足だが何とか通勤電車に飛び乗る。「好きなこと」は中毒症状のようだ。

展示と言えば額が必要だろうと思い、ホームセンターで安価な木製のA4額を買った。なぜA4かというと単純に自宅でプリントアウトした用紙を入れていた為である。それぐらい展示や制作に対する知識がなかった。


会社勤めの傍ら作家活動を行うクリエイターは多くいる。実際のほとんどは何かしらの兼業していることが多いのではないか。

「実は普段は働いていて‥明日も会社なんです」そんな会話も珍しくない。

何となくそこには追求しない雰囲気がある。互いが抱いたイメージや世界観を壊さないように程良い距離感がある。



 

私が就活をしていた頃の話だ。
当時、父親が単身赴任で関東に住んでいたこともあり、東京で就活する方がコスパが良いと思い(説明会や試験が多く一日に数件はしごできる)関西から東京へ就活の拠点を移した。

情報メディア学科だったのでIT系(SE採用)を受けることも多く、その日はとあるIT企業でグループディスカッション形式の就職試験があった。
(部屋の感じや椅子の位置など、当日の出来事は今でも鮮明に覚えている。)

その場にいた社員の試験管は「女性BOSS」という風貌の方だった。

質問タイムの際、他の就活生が残業時間について尋ねていた。すると試験管は

「残業というものは体育祭や文化祭のように、みんなで残って和気あいあいと取り組む(当たり前の)ものです。」と答えた。

学生は少し凍り付く。
その後は身に着けておくべきスキルなど、当たり障りのない質問が続く。試験管はズバズバっと答える。まるでドラマに出てくるような「おっかない上司」みたいだ。
互いに質問や回答を繰り返す攻防戦そのものが試験だった。


もう次の選考に進めなくてもいいやと感じだので、私も思い切って質問してみた。

「私には別に夢があるんですが、そういう夢がある社員がいたらどう思いますか?」


今思えば思い切り生意気な質問だ。その会社にとっては一番タブーな発言かもしれない。
回答はご想像の通り、そのような社員は受け入れ難いといったものだった。

今から名前を呼ばれた方は次の選考に進めるので残ってください。それ以外の方はお帰りくださいという即時発表だった。
モチロンそんな質問をしたのだから、会社としては扱いにくいヤツで合格できるはずはない。笑

荷物をまとめて退室した。



その後も就活を続けがなかなか上手くいかず夏前に疲れて心折れてしまった。


いつの頃からか、就職したら「自分の夢」みたいなものには蓋をして、会社の中でいかに活躍できるか そんな社会人像に囚われていた。

今考えると上手くいかない理由は簡単に分かる。

自分の夢に当てはまる会社も職種もないのだから。




最終的には何とか内定をもらえた会社に勤め、自分なりにけっこう懸命に働いた。
途中で働き方を変えたいと申し出た際はテレワークを認めてくれたり、私がやりたかったことを応援してくれる温かい会社だった。最後の最後に拾ってもらった会社がそんなところだった。


これだけ働き方が多様になった今だから、会社に所属しても、転職をたくさんしても、フリーランスで頑張るのも本人が充実していれば それで良いと私は思う。


自身はウーパールーパーが好きで、絵を描いたりグッズを制作している。たまにグラフィックデザインやweb関連の仕事もする。

ウーパールーパーアーティストというヘンテコな肩書きだが、ウーパールーパーアーティストがフライヤーのデザインをしても良いし、webデザインをしても良いし、講師やバイヤーなんかしても面白い。そこに制限は存在しない。

ない職業、職種なら自分で作ってしまうのも手だ!


自由で新しい働き方がスタートすると、急速に毎日が充実して楽しくなりだした。

懸命にやった末に悩んだら一度立ち止まって、自分の特性を生かしたオリジナリティ溢れる働き方を再構築するのも良いかと思う。
自分の本当にやりたいことに素直になると、新しい働き方を拓けるかもしれない。
会社に所属している人はやってみたい案件や社内での働き方を、少し勇気を出して上司や先輩に相談してみるのも良いと思う。意外と面白がって受け入れてもらえることもあるのではないか。

私もこれから制作することで人の役に立ちたいし、何より楽しませることができるウーパールーパーアーティストとしての業務を遂行していきたい。